営業職時代の体験談〜ミステリアスなお客様編〜

 

先日もケーブルテレビの営業職時代の体験談を書かせて頂きましたが、これがいつもよりスターをもらえたりして、少し好評っぽいので、また書かせてもらいます。他の記事に関しても、スターをくれたりしてくださる方々ありがとうございます。やっぱり何か書くのであれば、喜んでくれる人がいた方がいいので、励みになります。そして今回は、営業職時代の体験談、ミステリアスなお客様編です。

 

 

先日書かせてもらったものです。よかったらどうぞ。

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 ミステリアスなお客様との出会い

 

いつものごとく、アポを取得して訪問します。割と家賃が高そうなマンションです。(場所とマンションの見た目から判断)玄関横にはイヴサンローランの傘。高そうでオシャレ。そして、ピンポンすると出てきたのが、推定40歳前後の男性。この男性、見た目が割とカッコいいのです。

 

40代前後になると、お腹もたるんでしまったり、髪も薄くなったりする方もいるでしょうが、その方はお腹もたるんでいないし、髪もフサフサ。

 

そして、バスローブを着ているではありませんか。このまま上等なワインなど飲み出しそうな雰囲気。そして、愛想もいいし、なんか優しかった気がする。でも、この男性独身なのかな?という疑問が湧いてきます。いや、それか女性を何人もたぶらかしていて結婚してないのかも、とかも勝手なことを妄想します。

 

会話というか営業が始まる

 

この男性、優しいので話がしやすいのです。しかし、同時に頭もキレそうなので、契約とるの難しそうだな、とも思っていました。当時の私はというと、営業にも慣れてきて、営業目標達成に闘志をメラメラ燃やしていた頃です。1年目の後半だった気がします。

 

そして、最初の雑談から営業に入ってきます。もう営業に慣れつつあった頃なので、マニュアルのセールストークもスラスラと口から出てくるようになっていました。また、自分なりのアレンジを加えたりもしていました。アレンジを加えると言っても少しだけですが。

 

セールストークに入って少し時間が経つと、「こんなマニュアル通りの説明いらないよ」と男性のお客様が仰ったのです。「えっ、あっすいません。」としか言えない私。今までこんなこと言われたことなかったので、少し驚いてしまいました。そして、男性のお客様は、「君は本当のところどうして欲しいの?単刀直入に言って?」的なことを仰りました。

 

実は「営業で伺う」なんてことを言って、アポを取っているわけではないのです。以前にも書かせてもらいましたが、”テレビの電波測定”だとか、”建物のオーナー様と〇〇(会社名)の契約でチューナーを置くことができるのでその説明”という大義名分があるのです。これが私が働いていた会社のやり方です。

 

ここで私は頭を悩ませす。「営業だなんて言ったら怒られるかも…でも、単刀直入に言ってるし…」と悩みます。私は、もう単刀直入に言うことを決めました。お客さんそう言っているし。そして、当時会社で売れと言われていた1番高いプランに入って欲しい、ということを伝えます。

 

ドキドキの私。「訪問販売で、いきなりこんな直接な営業あるかよ。これで入ってくれたらすごいな」と思いました。賭けでした。お客様の返答を待つ私。

 

すると、お客様の男性は「わかった。じゃあ、これにしよう。」と仰るのです。「はっ!?本当にいいの?対して説明してないけど…」と内心思いました。しかし、当時は私も営業マンの端くれです。「ありがとうございます!」と精一杯明るく答えました。

 

そして、お客様の男性は「君いいね。頭いいね。柔軟に対応して。」と仰ってくれるではありませんか。内心ホッとしました。そして、嬉しくもありました。ただ、話はこんなに上手く進みません。

 

契約する際に起こった問題 

契約する際に、お客様のデータを入力するのです。データを入力して、機器の取り付けの作業の日程を押さえるのです。そして、そのデータを入力する際にあることが発覚します。

 

なんと、この男性のお客様、以前にも契約していたことがあるのです。しかも、お金の未払いで解約になっているそうなのです。

 

いや、同姓同名なだけかもしれない。なにはともあれ、まずは確かめなくてはなりません。そして、確認してみると、「あー、入ってたかも」と仰るのです。

 

そしてここからが、言いにくいところです。加入してたか加入してなかったか、よりも言いにくいのが未払いになっていることです。ただ、「あー、入ってたかも」と言うくらいなので、そんなに悪い思い出でもなさそうです。

 

とりあえず、言うしかありません。未払いになっていることを。そして、伝えると「そうなんだ〜いくらなの?」と聞いてくるのです。それが、けっこうな額なのです。「わかった。払うよ。」と仰ってくれました。よくよく話を聞くと、未払いになってことは、このお客様自身に否があったわけではないのです。

 

お客様が知らないところで、一緒に住んでいた方がそのお客様の名義で契約してしまったそうなのです。そして、お客様自身も「俺の知らないところで、未払いがあるなんて気持ち悪いからな〜」と仰ってくれるのです。「いい人!」と心の中で感激します。

 

ただ、未払いで解約になった人が再度契約するには、部長の許可を取ったり、通常の契約書類の他にも書類が必要になったりするのです。これが面倒になって、「やっぱ契約するのやめる」とか言わないかなって不安だったのですが、それも大丈夫でした。その書類は作業日に書いてもらうという話になりました。

 

作業日当日

 作業日に伺うのは、通常は作業班だけなのです。しかし、私も書類を書いてもらいに伺います。そして、伺うとお客様はご機嫌な様子。以前契約した時よりも、サービスが進化しているからです。「〇〇(私の苗字)君、これいいね〜」と仰ってくれます。

 

「一番高いプランにして頂いて良かった」と私は思いました。「ありがとうございます!」とお客様に言いました。そして、作業も無事完了して、書類も頂くことができました。丁寧に、何度も、契約月の翌月の最初の支払いに未払い分の支払いが来ることも伝えてあります。また、それを書いた紙も冷蔵庫に貼ってもらいました。「これで大丈夫だろう」と安心しました。

 

契約後の話

 お客様との契約を交わしてから大体2ヶ月程した頃。”お金の未払いで短期解約になりそうなお客様リスト”が配られました。何故、そんなリストが配られるのかというと、短期解約(確か3か月くらいで解約)は、営業の数字がマイナスになってしまいます。だから、お金の未払いで解約になりそうなお客様には、何としてでもお金を払ってもらわなくてはなりません。

 

つまり、”お金の未払いで短期解約になりそうなお客様リスト”のお客様には、借金取りのごとく、お金を払ってもらうように追わなくてはなりません。そして、その”お金の未払いで短期解約になりそうなお客様リスト”の中に、今回お話をしているお客様の名前があるのです。

 

一瞬目を疑いました。「いや、これは夢なのではないか」とも思いました。「はっ!?あれだけ言ったのに、払ってないの?」とも思いましたが、「いや、お金を入れる口座とか間違えちゃっただけじゃないか」と思い直しました。

 

でも払ってもらうべきものは払ってもらわなくてはいけません。値段とかサービスのことか、さらには前回の未納分のことまでもちゃんと説明しているのです。しかも、一番高いプランで契約して頂いているので、短期解約になってしまうとかなりの痛手なのです。

 

通常私は、この未納で短期解約になりそうなお客様の取り立てに行くのが好きではありません。まあ、好きな人はいないかもしれませんが。テレアポとピンポンと並んで、私の嫌いな仕事の3本の指に入ります。

 

ただこの時ばかりは、そのお客様のことを信じていただけに、ちょっとした怒りも込み上げてきました。また、少しカッコいいとも思っていたので、未払いになるなんて信じたくなかったのもあるかもしれません。

 

これらの想いもあって、必死に追います。契約してもらってから2ヶ月後なので、当時担当している物件とは逆の方面ではあったのですが、ほぼ毎日のように家に行っていました。雨の日も。また、電話もいっぱいしました。

 

ところが、これだけ毎日のように言っているのに、全然家にいる気配がないのです。試しに手紙を玄関のドアの隙間に挟んでみました。次の日に行っても、その次の日に行ってもその手紙は抜けていませんでした。電話もつながる気配がありません。

 

電気のメーターが回っているのも見た事ありませんでしたし、イヴサンローランの傘もなかったです。先輩などに話してみると、「払えなくなったんじゃね?」などと冗談ぽく言われました。

 

普通に考えるとそうなのですが、やっぱり少し仲良くもなりましたし、なんか信じがたかったのです。ただ、あれだけ通っても、そのお客様に会う事はできませんでした。電話してもつながることはありませんでした。結局短期解約になってしまいました。

 

そして、1年後くらいにまた同じ物件の担当になります。試しにそのお客様の部屋の玄関の隙間を覗いてみます。1年前に挟んでおいた手紙がぬけていないのです。人がいる気配もないです。このお客様がどうなったのか、気になるところです。元気にしているのでしょうか。元気にしていて欲しいものです。少し心配でもあります。

 

ただ、人は本当にわからないものです。

 

 

 

 

 

 

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